日本の英語教育で私たちは、英語の文には五つの文型があると習う。ほとんどの人はこれに何の疑問も持たずに、英語の勉強を続けて来たのではないだろうか。
さて、この5文型の概念は、一体どこから来たのだろうか?英語を母国語とする人たちは、自国の言語を習うとき、5文型を学習するのであろうか?
上記に対する答えは、ノーである。英語のネーティブスピーカーに、英語の5文型(The Five Cardinal Sentence Patterns)を知っていますかと尋ねても、誰もが知らないと答えるであろう。
さて、上に書いた「英語の5文型の概念は、一体どこから来たのだろうか?」への回答であるが、それは英国の英語学者 C. T. オニオンズ(Charles Talbut Onions)が1904年に編纂したAdvanced English Syntax 内の記述から来たものだとされている。syntax(シンタックス)は、「構文(論)、統語論」と日本語に訳されている。簡単に言うと、「英語の言語においての 語 (words) や 句 (phrases) の並び」を意味する。
オニオンズは、その書の中で、文の述部(predicate)の部分における語の並びについて記している。彼は、述部は下記の5つの型に分けられるとしている。
1. V 2. VO 3. VC 4. VOO 5. VOC
(V: Verb[動詞], O: Object[目的語], C: Complement[補語])
英国の上記の書は述部の型について述べたものであったが、日本ではその述部の型に主部が必要と考え、主部の中に入る S: Subject[主語]をそれぞれの文型の頭に配置して、文は下記の5つの型から出来上がるとした。
1.SV 2.SVO 3.SVC 4.SVOO 5.SVOC
英国では、上記の述部の5文型は、遥か過去の遺物として、今は忘却の彼方のものとなっている。しかし、日本では、それにSを加えた5文型が今もって、まるでそれが英語学習の根幹をなすものであるかのように扱われ、一世紀以上に渡って使い続けられて来ているのである。
一世紀以上の時を経た現在は、英語の文型には7つの型があるとされている。下記の7文型である。
1.SV 2. SVO 3. SVC 4. SVA 5. SVOO 6. SVOC 7. SVOA
Aは、Adverbial のイニシャルで、日本語の訳語は「副詞類」となる。品詞の一つとしてadverb(副詞)があったことを思い出して頂きたい(第11章参照)。文の構成要素のレベルで、品詞である副詞と同様の役割を果たすことから、adverbial (副詞類)という名称が与えられている。
次の章では、英語の文型を成り立たせている要素についてみていきます。「第15章 英語文型の要素」へお進みください。