第8章:「名詞」とは、

「名詞」とは

名詞の起こりは、人が何かものを見た時に自分以外の人に、何を見ているのかを伝えたくて、見ているものに名前を与えたことにあります。これは、視覚、つまりビジュアルに認識したものを名前で表したものであると言えます。そのものに名前を与え、話し相手もそのものの名前を知っていることで、コミュニケーションが成り立ちます。

名前は、物理的なもののみに与えられるとは限りません。人は、物理的なものに類似して頭の中で想像したもの、及び、自分の頭の中で思い浮かべている想いを、誰かに伝えたいと思うようになります。ビジュアルに認識したものを人に伝えたいと思ったのと同じ様に、頭の中に浮かべたものや想いを人に伝えたいと思うようになります。

但し、物理的なものに類似して想像しているものは頭の中で輪郭を持ったものとして想像されますが、抽象的な思いは、物理的なもの、また、それに類似して想像しているものとは違って、輪郭を持ちません。人は、頭の中のバーチャルな世界で、その思いに輪郭を与え、物理的なものの様に取り扱おうとします。輪郭を与えられた想いは、まるで箱に詰められたものの様に物理的なものであるかのように扱われることになります。

想いが詰められた箱には、箱の中身である想いに相応しい名前が必要となります。よって、箱には出来るだけ的確に中身の想いを表す名前が与えられます。人は同じ文化の中で育つ過程で、この箱に付けられた名前を共有するようになります。そして、その名前を相手に述べることで、箱の中の抽象的な想いを相手に伝達することが可能となるのです。

名詞とはこの様に、ビジュアルに具体的に見えるもの、それに類似して想像したもの、そして、想いの箱を 相手に伝達するときに使われる詞(ことば)です。いずれも、輪郭を持ったものを相手に想像してもらうために使用される詞であると言えます。

このように、名詞には、物理的なものを指し示す名詞、それに類似して想像したものを示す名詞、また、 抽象的な思いを示す名詞があります。

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