第9章:「動詞」とは、

「動詞」とは、

動きの詞(ことば)と書かれている動詞。英語では、verb である。この動詞(verb)の中には、be動詞と一般動詞があるとされている。

まず、be 動詞について話をしたいと思います。長く英語を話し、書いている内に何やらこの「be 動詞」といわれるものは本当に動詞なのかと思うようになります。特に動きを表すでもなく、また、感じたりするときに使用される知覚動詞でもない。状態を表す動詞と言われることが時にはあるが、be 動詞そのものが何らかの状態を表しているとも明確には思えない。

自然に生成された文は、疑問文ではなく平叙文である。この平叙文において、助動詞(can, could, may, might, will, would, shall, should 等)が使用されていない場合、今 私たちが be 動詞と呼んでいる詞は一般動詞と同じように主語となる語を含んだ句、つまり、文の主部に当たる部分の次に来る。また、動詞が述べられる述部に助動詞がある場合も、be 動詞と呼んでいる詞は一般動詞と同じように助動詞の後ろに来る。

このように、今 私たちが be 動詞と呼んでいる語の文中での配置箇所は、一般動詞の配置箇所と同じであった。よって、この be を原形とし変化する語彙(am, is, are, was, were)を、一般動詞と同じように動詞と見なし、その語彙群を総称する呼び名として原形の語を用いて、be動詞としたのであろう。

けれど、この be 動詞は、私たちが一般動詞と呼んでいるものとは違う。be 動詞は、主語に立てた名詞とその名詞を補足的に説明する語句との間に置かれる。そして、それら両者を繋ぎ合わせる役割を果たしている。繋ぎ合わせる詞、つまり繋合詞(けいごうし)である。

通常、繋合詞の後ろには主語を補足的に説明する語句が来る。例えば、主語に「彼」を立てて、その「彼」のことを補足的に「生徒」と説明したいのであれば、繋合詞であるbe 動詞の後ろに「生徒」という語句を置く。be 動詞は、「彼」と「生徒」を繋げる役割をする。また、「彼」は「大きい」と言いたいのであれば、「彼」を主語に立てて、次にbe 動詞を置き、そのbe動詞の後ろに「大きい」という語句を置く。前者と同じ様に、be 動詞は主語に立てた語句とその語句を補足的に説明する語句との間に入り、両者を繋ぎ合わせる役割をする

ときにこの繋合詞である be 動詞の後ろに、場所を表す語句が述べられることがある。その様な場合があることから、be 動詞は存在を表す動詞と言われることがある。それは、主語を補足説明するために be 動詞の後ろに置かれた語句が場所を表すため、その様に解されるのである。be 動詞自体は、存在を表す動詞ではなく、あくまでも繋合の為に使われる詞である。

上記の説明からお分かり頂ける様に、be 動詞他の一般動詞の様に、動作や知覚といった意味合いを持たない詞であり、繋合の為に使われる繋合詞(けいごうし)と言える。

尚、ときに文が be 動詞で終わる場合がある。これは、その文の前に何らかの話の流れがあり、聞き手、読み手が be 動詞の後ろに来る語句を予想出来る場合である。つまり、本来 be 動詞の後ろで主語に対する補足説明として述べられる語句が省略されたと考えるのが妥当である。

次に、一般動詞についてである。日本の英語教育では、一般動詞には自動詞と他動詞があると習う。英語を学習した人に、「一般動詞には2種類あるのですが?」と尋ねると、大抵の人は「自動詞と他動詞」と答える。私には、この回答の順序が日本人らしいと思える。英語を話す人達に同じ質問をすると、「他動詞」と先に答えて、次に「自動詞」と答える。

農耕民族は、農地に種(たね)を蒔いて植物が育つのを待つ。農耕民族は、比較的長い時間をかけて農作物の世話をし、農作物自身が育つのを待つのである。植物が自ら育って食物になるのを待つのである。この時の主体は、植物である。これに対して、狩猟民族は荒野に出て獲物を探す。狩猟民族は、短時間で獲物を仕留めることを目標として行動するのである。この時の主体は、狩猟をする人(人たち)である。

前者は、農作物の成長に趣を置き、農作物の成長は「成長する」という自動詞で表される。後者は、獲物の捕獲に趣を置き、狩人が「獲物を捕る」という他動詞で表される。日本語話者が自動詞を先に挙げ、英語話者が他動詞を先に挙げる理由がここに垣間見える。

また、英語を話す人達がなぜ先に「他動詞」と答え、次に「自動詞」と答えるのか、それは二つの言葉を英語に置き換えてみたら良く分かる。

他動詞は transitive verb で、自動詞は intransitive verb である。transitive という形容詞が先にあり、それに否定の接頭辞 in を付ける形で intransitive という形容詞が作られている。つまり、英語を話す人達は、動きの先には何かその目的となるものがあると考える。よって、目的語を取る動詞である他動詞が先に頭に浮かぶのである。これらの単語の形成がそれを物語っている。

他方、種(たね)を農地に植えて世話をしながら植物が地中から出て来ることに一種の感謝の気持ちを抱く農耕民族は、植物自身が育つことに敬意を表し、育つということを重んじる。よって、自動詞を先に頭に思い浮かべるのである。

上記の様に、英語には繋合詞と見なせる be 動詞と、一般動詞がある。そして、一般動詞には二種類の動詞があり、目的語を取る他動詞と、目的語を取らない自動詞がある。

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