第9章:「動詞」とは、

「動詞」とは、

動きの詞(ことば)と書かれている動詞。英語では、verb である。この動詞(verb)の中には、be 動詞と一般動詞があるとされている。

まず、be 動詞について話をしたいと思います。長く英語を話し、書いている内に何やらこの「be 動詞」といわれるものは本当に動詞なのかと思うようになります。特に動きを表すでもなく、また、感じたりするときに使用される知覚動詞でもない。

自然に生成された文は、疑問文ではなく平叙文(第17を参照)である。この平叙文において、助動詞(can, could, may, might, will, would, shall, should 等)が使用されていない場合、今 私たちが be 動詞と呼んでいる詞は一般動詞と同じように主語となる語を含んだ句、つまり、文の主部に当たる部分を前に置く。また、動詞が述べられる述部に助動詞がある場合も、be 動詞と呼んでいる詞は一般動詞と同じように助動詞の後ろに来る。

このように、今 私たちが be 動詞と呼んでいる語の文中での配置箇所は、一般動詞の配置箇所と同じであった。よって、この be を原形として変化する語彙(am, is, are, was, were)を、一般動詞と同じように動詞と見なし、その語彙群を総称する呼び名として原形の語を用いて、be 動詞としたのであろう。

けれど、この be 動詞は、私たちが一般動詞と呼んでいるものとは違う。be 動詞は、述部に置いた「状態」を表す語/語句と、主部に置かれた その「状態」の「主体なるもの」の両者を繋ぎ合わせる役割を果たしている。繋ぎ合わせる詞、つまり繋合詞(けいごうし)である

通常、繋合詞の後ろには「状態」を表す語/語句が来る。例えば、「生徒」であるという状態を言いたいのであれば、繋合詞である be 動詞の後ろに「生徒」という語句が置かれる。そして、「誰」の「何」の「状態」を言っているのかを示すために次に繋合詞である be 動詞の前に主語に当たる語/語句が置かれる。また、「大きい」と言いたいのであれば、繋合詞である be 動詞の後ろに「大きい」を表す語/語句 が置かれる。そして、上記と同じように、「誰」の「何」の「状態」を言っているのかということで、be 動詞の前に主語に当たる語/語句が置かれる。この様に、繋合詞である be 動詞は、その後ろに「状態」表す言葉を従え、その「状態」の主体となる主語を前に導き出す。よって、be 動詞とは、be 動詞の後ろに従える「状態」を表す言葉と、be 動詞の前に表示する「その状態の主体となるモノ」の言葉を繋ぎ合わせる役割をする繋合詞である

ときにこの繋合詞である be 動詞の後ろに、場所を表す語句が述べられることがある。その様な場合があることから、be 動詞は存在を表す動詞と言われることがある。それは、be 動詞の後ろに置かれた語句が場所を表すため、その様に解されるのである。be 動詞自体は、存在を表す動詞ではなく、あくまでも、be 動詞の後ろに来る「状態」とその前に置かれる「状態を示す主体」を繋ぎ合わせるために使われる、つまり、繋合の為に使われる詞である。

上記の説明からお分かり頂ける様に、be 動詞他の一般動詞の様に、動作や知覚といった意味合いを持たない詞であり、繋合の為に使われる繋合詞(けいごうし)と言える。

尚、ときに文が be 動詞で終わる場合がある。これは、その文の前に何らかの話の流れがあり、聞き手、読み手が be 動詞の後ろに来る語句を予想出来る場合である。つまり、本来 be 動詞の後ろで主語の表示に先だって思い浮かべられる「状態」を表す語/語句が省略されたと考えるのが妥当である。

次に、一般動詞についてである。日本の英語教育では、一般動詞には自動詞と他動詞があると習う。英語を学習した人に、「一般動詞には2種類あるのですが?」と尋ねると、大抵の人は「自動詞と他動詞」と答える。私には、この回答の順序が日本人らしいと思える。英語を話す人達に同じ質問をすると、「他動詞」と先に答えて、次に「自動詞」と答える。

農耕民族は、農地に種(たね)を蒔いて植物が育つのを待つ。農耕民族は、比較的長い時間をかけて農作物の世話をし、農作物自身が育つのを待つのである。植物が自ら育って食物になるのを待つのである。この時の思考概念で主体となるのは、植物である。植物が自ら成長していく姿である。

これに対して、狩猟民族は荒野に出て獲物を探す。狩猟民族は、短時間で獲物を仕留めることを目標として行動するのである。この時の思考概念で主体となるのは狩人である。そして、その狩人は何もしないのではなくて、獲物を捕獲しようとするのである。よって、この主体となる狩人には捕獲の対象となるもの(獲物)が必要である。

前者は、農作物の成長に趣を置き、農作物の成長は「成長する」という自動詞で表される。後者は、獲物の捕獲に趣を置き、狩人が獲物を「捕る」という他動詞で表される。日本語話者が自動詞を先に挙げ、英語話者が他動詞を先に挙げる理由がここに垣間見える。

また、英語を話す人達がなぜ先に「他動詞」と答え、次に「自動詞」と答えるのか、それは二つの言葉を英語に置き換えてみたら良く分かる。

他動詞は transitive verb で、自動詞は intransitive verb である。transitive という形容詞が先にあり、それに否定の接頭辞 in を付ける形で intransitive という形容詞が作られている。つまり、英語を話す人達は、動きの先には何かその目的となるものがあると考える。よって、目的語を取る動詞である他動詞が先に頭に浮かぶのである。これらの単語の形成がそれを物語っている。

他方、種(たね)を農地に植えて世話をしながら植物が地中から出て来ることに一種の感謝の気持ちを抱く農耕民族は、植物自身が育つことに敬意を表し、育つということを重んじる。よって、自動詞を先に頭に思い浮かべるのである。

上記の様に、英語には繋合詞と見なせる be 動詞と、一般動詞がある。そして、一般動詞には二種類の動詞があり、目的語を取る他動詞と、目的語を取らない自動詞がある。

次の章で扱う品詞は形容詞です。「第10章:「形容詞」とは、」へお進みください。

タイトルとURLをコピーしました