第1章:「狩猟民族から生まれた英語」と「農耕民族から生まれた日本語」

民族による言語の違い

「狩猟民族の中から生まれた英語」

英語の起源を遡っていくと古代のインドからヨーロッパに至る地域に住んでいたある民族の言語(インド・ヨーロッパ祖語)に辿り着くとされています。

この言語を話していた人たちは、狩猟民族であり、彼らは山や川、荒野に出て、動物を仕留めて日々の食料を得ていました。

狩りに出ると、多くの危険が待ち構えています。周囲に何らかの動きがあると、それを直ちに感じ取らないと動物に襲われてしまいます。

よって、彼らには即座に相手を察知する能力が備わったとされています。

さらに、動物に遭遇した場合、攻めるべきなのか、逃げるべきなのか、その判断が即座に求められます。

次に、その判断を下すには、その空間の中で自分たちがどの位置に居るのか、客観的に瞬時に捉える必要があります。

よって、彼らには空間内での自分たちの位置を瞬時に把握する能力が備わったとされています。

狩猟民族が身に着けた能力とは、

1.相手の存在を即座に察知する能力。
2.客観的に空間の中で自分たちの位置を瞬時に把握する能力。

言語は生活の営みの中から生まれてきます。上記の能力は、言語の表現にも反映されます。

1. 相手の存在を明確に述べる。
2. 次に、自らの存在を明確に述べる。

「農耕民族の中から生まれた日本語」

日本語においてはその起源がまだ明確にはなっていませんが、大陸のアジアモンスーン域の方言と共通性があるとされています。

アジアモンスーン域は雨量の多い地域で、農耕民族が多く住む地域です。このアジアモンスーン域に住む農耕民族が朝鮮半島から日本に渡って来て、今の日本人と日本語の基礎を創り上げたとされています。

農耕民族は、適度な雨量が期待できる肥沃な土地を選んで、その土地に定住します。そして、大きな天変地異でも起こらない限り、長期に渡って同じ場所に住み続けます。

彼らは定住した地域で農作物を作り生活を営みます。農業を営む彼らは、協調、協働の精神をもっとも大事にします。農作物を育てるという目標の為に、皆が一致協力して長期に渡って農作物の育成に力を注ぎます。

言わば、一つの共同体です。この共同体の社会の中では個人の意思よりも、共同体への協調の精神が優先されます。この共同体への思いは、言葉の発出に大きな影響を与え、話者や書き手がどのような言葉を発出するかに制限をかけます。この思いは、言葉を司るの機能の奥深くに存在するもので、いわば脳の無意識の領域で言葉の発出をコントロールします。

この無意識下にある思いは、共同体の中で、自己と対比して相手を際立たせたり、相手との対比による、または、対峙の状態下において、自らの存在を前面に押し出したりすることを極力避けます。なぜならば、その様にすることは、共同体の調和を乱すことに繋がるからです。相手を述べず、自らを述べない、これは、「状態」「動き」を表す言葉を述べるだけで、会話が成立する世界を可能にします。文脈の流れによって、相手や自分の存在は、聞き手や読み手の判断に任せられるのです。

よって、この様な共同体を形成する農耕民族は、

1. 相手を際立たせることを極力避ける。
2. 自らの存在を前面に押し出そうとはしない。

これらのことは、言語表現にも反映されます。

1. 出来るだけ相手を明示しない形で述べる。
2. 自らの存在を明確に述べない。

次は、第二章:空間内での「英語話者の場面認識」と「日本語話者の場面認識」のテーマへ。

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