第14章で、英語の文型には7つの文型があるとお話ししました。本章では日本の学校で習う以下の5文型以外に存在する2文型について述べていきたいと思います。
まずは、日本の学校で習う5文型について押さえておきます。理解を深めていただくために、各々の文型に該当する英語の例文を掲載しました。
文型 | 文型の要素 |
SV | 主語 動詞 I smile. |
SVO | 主語 動詞 目的語 I learn English. |
SVC | 主語 動詞 補語 I am a student. / I am tall. |
SVOO | 主語 動詞 目的語 目的語 I gave him a book. |
SVOC | 主語 動詞 目的語 補語 I made him happy. |
さて、上記の他に存在する2文型とは、どのようなものであり、また、何故それらの2文型が必要であるのかを、例文を上げて下記にて説明していきたいと思います。
1) | SVA | 主語 動詞 副詞類 I went to the supermarket. |
2) | SVOA | 主語 動詞 目的語 副詞類 I gave a book to him. |
先ず、1) のSVA(主語 動詞 副詞類)の文型についてです。
I went to the supermarket.
(私は、そのスーパーマーケットに行った。)
日本の学校での英語教育では、英語の文型は5文型のみとされていますので、上記の文の文型は SV(主語 動詞)の文型として処理されてしまいます。
SVとして文型を見てゆくと、まず話し手や書き手が感じ取る*「動き」があります。品詞で言うところの「動詞」です。品詞の「動詞」は文型要素の「Verb(動詞)」の箇所に入ります。
*(上記の文の「感じ取る」とは、第2章で説明したように「自分の分身をその空間の外側に置いて、その分身を通して空間の中に居る自分を見て」空間の外に居る自分が得る「感じ取る」です。)
went の意味は日本語で「行った」です。「行った」に対してテーマ(主題)となるものは何かというと、I (私)です。品詞として名詞であるI(私)が、文型の要素である Subject (主語)に入ります。そして、I went. という SV(主語 動詞)の文型が出来上がります。
ここで、この文が意味の上で成立するものであるか、検討してみたいと思います。「私は行った」だけでは、どこに行ったのかが分かりません。会話の中で誰かが「あなたはスーパーマーケットに行きましたか?」と尋ねて来て、尋ねられた人がそれに答える言葉として、to the supermarket(スーパーマーケットへ)を省略して I went. と答えているのであれば、本言葉の表現が成り立ち得るかもしれません。
しかし、通常の言葉の表現としてはやはり「どこへ」がないと意味の成立という点から不自然な表現であると言えます。文型は、表現された文の意味の成立を前提として成り立つものでなければなりません。依って、I went to the supermarket. は、SVの文型であるとは言えないことになります。
そこで、to the supermarket を文型の要素として扱う必要が出てきます。さて、文型のどのような要素と見なすべきか。to the supermarket というフレーズ(句)を成立させている語を品詞という観点から見てゆくと、まず、supermarket が名詞、the がその名詞にかかる冠詞、この二つが合わさって、名詞句を作り上げています。
説明の本筋から少し逸れますが、なぜ、冠詞句と言わないかと言うと、句の意味の成立上、この場合は the supermarket (そのスーパーマーケット)の意味を成立させるために必須となる語は、supermarket (スーパーマーケット)という名詞であり、the(その)という冠詞ではないからです。
フレーズ(句)の中で意味の成立の上で、絶対的に必要となる語の品詞名が句の用語名として採用されます。冠詞という品詞名ではなく、絶対的に必要な語 (supermarket) の品詞名である「名詞」が句の用語名として採用されます。依って、the supermarket は名詞句となります。
さて、説明の本筋に戻って、次に、この名詞句である the supermarket の前に to が付いています。toという語は、品詞でいうと前置詞です。
第12章で説明した様に、前置詞は名詞(句)の前に付いて、名詞(句)の意味に前置詞の意味を加えます。前置詞の意味を加えられた名詞(句)は、前置詞句を作り上げます。ここでは、the supermarket という名詞句の前に to が付くことで、to the supermarket という前置詞句を作り上げています。
さて、the supermarket という名詞句に、前置詞の to が加わり、前置詞句となった句は、どのような振る舞いをするようになるのでしょうか。
ここでも12章の説明を思い出して下さい。前置詞句となった句は、述部の部分の意味を成立させるために、名詞を修飾する形容詞句になるか、動詞や文全体を修飾する副詞句になります。
went to the supermarket の述部には、went という品詞でいうところの動詞しかありませんので、to the supermarketは、動詞である went にかかることになります。よって、to the supermarket の前置詞句は、品詞として、第11章で述べました様に副詞の役割を持つことになり、to the supermarket は2語以上からなる語の塊である句であることから、副詞句と呼ばれます。
英語では、述部の文型の要素である O (Object [目的語])、C (Complement[補語]) 以外で、述部の意味の成立上から無視出来ない文型の要素を adverbial (副詞類)と呼んでいます。
上記より I went to the supermarket. は、SVという文型ではなく、SVA (Subject Verb Adverbial [主語 動詞 副詞類] ) という文型として扱われます。
次に、2) の SVOA の文型についてです。
I gave a book to him.
(私は、本を彼に与えた。)
日本の学校での英語教育では、上記の文では、文型が SVO(主語 動詞 目的語)とみなされます。
SVOとして文型を見てゆくと、まず話し手や書き手が感じ取る「動き」があります。品詞で言うところの「動詞」です。品詞の「動詞」は文型要素の「Verb(動詞)」の箇所に入ります。
gave の意味は日本語で「与えた」です。「与えた」に対して目的語となるものは何かというと、a book(本)です。品詞として名詞(句)である a book(本)が、文型の要素である Object (目的語)に入ります。そして、I gave a book. というSVO(主語 動詞 目的語)の文型が出来上がります。
ここで、この文が意味の上で成立するものであるか、1) 項の文と同様に検討してみたいと思います。「私は本を与えた」だけでは、誰に与えたのかが分かりません。会話の中で誰かが「あなたは彼に本を与えましたか?」と尋ねて来て、尋ねられた人がそれに答える言葉として、to him(彼に)を省略して I gave a book. と答えているのであれば、本言葉の表現が成り立ち得るかもしれません。
しかし、通常の言葉の表現としてはやはり「誰に」がないと意味の成立という点から不自然な表現であると言えます。文型は、表現された文の意味の成立を前提として成り立つものでなければなりません。依って、I gave a book to him. は、SVO の文型であるとは言えないことになります。
そこで、to him を文型の要素として扱う必要が出てきます。さて、文型のどのような要素と見なすべきか。to him というフレーズ(句)を成立させている語を品詞という観点から見てゆくと、まず、him が名詞です。
him という名詞に、前置詞の to が加わり、前置詞句となった句は、どのような振る舞いをするようになるのでしょうか。
前置詞句となった句は、述部の部分の意味を成立させるために、名詞を修飾する形容詞句になるか、動詞や文全体を修飾する副詞句になります。
gave a book to him の述部には、gave という品詞でいうところの動詞と、a book という名詞句があります。第12章の「次に、前置詞句が後ろから動詞を修飾する場合について、」の箇所の説明を思い出して下さい。to him は、意味の成立の上で直前の名詞句ではなく、動詞である gave にかかることになります。よって、to him の前置詞句は、品詞として、第11章で述べました様に副詞の役割を持つことになり、to him は2語以上からなる語の塊である句であることから、副詞句と呼ばれます。
英語では、述部の文型の要素である O (Object [目的語])、C (Complement[補語]) 以外で、述部の意味の成立上から無視出来ない文型の要素を adverbial (副詞類)と呼んでいます。
上記より I gave a book to him. は、SVO という文型ではなく、SVOA (Subject Verb Object Adverbial [主語 動詞 目的語 副詞類] ) という文型として扱われます。
上記で見てきました様に、英語には日本の学校教育で習う5文型ではなく、7文型があることになります。
次の章からは、4章に渡って、英語の文の種類について取り上げます。まずは、「平叙文」についてです。「第17章 英語の文の種類 平叙文」をお読みください。