第13章:「冠詞」とは、

「冠詞」とは、

「冠詞」

冠詞とは、かぶせる詞(ことば)である。かぶせる対象となるのは名詞である。a は不定冠詞、the は定冠詞と呼ばれる。品詞の中で使い方が一番難しいのはこの冠詞であると思う。

長く英語と関わってきて僕が感じることは、日本語を思い浮かべずに英語だけで思考が出来て、英語で自分の思いをある程度正確に相手に伝えることが出来る様になった、その頃から間違わずに冠詞を使えるようになったと思う。

間違わずに冠詞を使いこなせるようになるには、まず、冠詞に対して基本的な感覚を持つことが大事だと思う。冠詞は、名詞に対して使用される。先にお伝えした様に、名詞とはビジュアルで具体的に見えるもの、そして、頭の中でビジュアルに見えたものに近い形で想像したもの、それらに与えられた名前である。更には、頭の中でパッケージ化された思いの箱に与えられた名前でもある。

 不定冠詞: a, an

まず、不定冠詞 a を用いる場合についてであるが、ビジュアルに見えた一つのものが、視界の中に初めて入って来たものであり、脳が瞬時に他にも同様のものがあると感じた、また、具体的に見えるものに近い形で想像したものに対して他にも類似のものがあると脳が感ずれば、その見たもの、想像したものの名前に、つまり 名詞に、a がかぶせられる。

同じ様に、バーチャルに頭の中でパッケージ化された想いの箱に対しても、脳が瞬時に他の人も箱の中身と類似した想いの箱を持つだろうと感ずれば、その思いの箱に与えられた名前、つまり、その抽象名詞に a がかぶせられる。

(「名詞」については、第8章の説明を、必要に応じて、再度 ご覧下さい。)

この a 「アは 元は古英語の ān 「アン」から来た語であり、 one (一つの)を意味していた。アン」の音が弱く発音されるようになり、a 「ア」となった。

a の元が one を意味する古英語の ān であったということを知ると、不定冠詞の a の使い方がさらに容易に分かるようになるのではないだろうか。

「一つの「何か」」、この「何か」の部分にビジュアルに見えるものの名前やそれに類似して想像しているもの、更にバーチャルな想いの箱の名前が入る。その名前に「一つの」という修飾語をかぶせるということは、脳は自ずとその名前のものと同種のものが他に一つ、または、それ以上に存在すると意識している訳である。

これは、具体的には、今 ビジュアルに目にしているもの、バーチャルに思い浮かべているもの、そして、意識の上で抽象的に思い浮かべている想いが、その他のものを凌ぐほどの独自性や単独性を有したものであるとは脳が感じていないと言える。つまり、特別なものとして定める必要性はないと脳が感じている訳である。依って、「定めないという意味をかぶせる詞(ことば)」 = 不定冠詞 というものを名詞にかぶせるのである。

ちなみに、不定冠詞の a は、母音で始まる名詞の前で使用される場合は an となる。これは、「ア」と発音しているときには口の中の舌の位置が口の中の上部から離れており、次に続く母音を発音するのが難しいからである。

a と 次の母音で始まる名詞との間に n を入れてあげることによって、舌は口の中の上面に触れることになり、そしてそこから舌を動かすと、次の母音を発音し易くなる。依って、母音で始まる名詞の前では a は an に変わるのである。

厳密に言うと、a が an へと変わるのは、人の頭脳が、舌がこの位置では次の音を出しにくいと感じ、次の音を出しやすい位置へ舌を移動させた結果である。

上記の「ちなみに」から始まる段落の説明は、現在の英語を見ると a の使用率の方が an よりも多いことに基づき、a を中心に置いて展開された説明である。

但し、先に述べた様に a は古英語の an から来た言葉であるということを踏まえると、元は an (one の意味)という不定冠詞が名詞の前に置かれていたと推測される。それが、子音字で始まる名詞の前に置かれると、発声が子音から子音への発音となり、ある程度の音の切れ目を入れなければ次の子音へとは移れない。そういったことが要因となって、an の n が落ちて、a へと変わったと考えるのが妥当であると思われる。

一方、母音で始まる名詞の前では、an のままで発声上 何の支障もないわけである。よって、母音を先頭に持つ名詞の前では、現在も変わらず an が使用され続けているのである。

 定冠詞: the

次に、定冠詞の the である。古英語では、名詞にかぶせられる定冠詞は、文中での名詞の現れる位置に応じて形を変えていた。いくつかの形態で定冠詞が名詞にかぶせられていた。その内の二つが the と that である。もちろん、その当時の綴りはこれらとは少し違っていたが。

名詞の前についてそのものの限定性を際立たせていたこの二つの定冠詞は、違った使われ方をするようになる。the は変わりなく名詞の前に付いて、その名詞に限定性を持たせる定冠詞として使われ続け、that は指示代名詞や関係代名詞として使用されるようになる。

それでは、定冠詞と呼ばれる the の説明を以下で行っていくことにする。

先ほど、古英語では、定冠詞の形態は文の中で名詞が現れる位置によって変わっていたと述べました。しかし、現在では名詞が文中のどこに現れようと、変化させずに同じ the が名詞にかぶせられる。この理由は、人は言葉を使用する時、少しでも楽をしたいと思うからである。インド・ヨーロッパ語族の中でも特に英語においては、様々な形態をしていた定冠詞は時間の流れと共に the のみになった。

さて、英語を話す人達は、どのように感じた時に、名詞に the をかぶせるのであろうか。

the をかぶせるときは、「もの」や「こと」を特定出来る場合である。会話をしたり、文書を書いたりしていて、何らかの「もの」や何らかの「こと」について話したり、書いたりしているとする。そして、その最中に、その「もの」やその「こと」に同じ名称で再度言及する必要があるとする。その様な時に、先に話したり、書いたりした「もの」や「こと」に、つまり、その名詞に the をかぶせる。

the をかぶせることによって、話し手・書き手は自分の思考の流れに一貫性を持たせることが出来るし、また 聞き手・読み手はその「もの」や「こと」が話の流れの中に出て来たとき、それが既出のものであることを確認出来て、話の流れを追っていくことが出来るのである。

次に続く第14章から第16章に渡っては、英語の文型についてお話しします。まずは、「第14章:英語の文型」についてをお読みください。

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