14章で、英語の平叙文は、7つの文型から成り立っていると述べました。それでは、それら7文型を成り立たせている要素とは何かを見ていきたいと思います。
ここで第3章の話を思い出して下さい。場面の中の要素を感じ取る順序です。「人間の脳は何かが静止して存在している場面を見たとき、まず何かがそこにあることを意識します。」、そして、「何かが動いている場面を見たときは、まずその動きに注意を向けます。」と述べました。
「ある」という意味を表す言葉も、「動き」を表す言葉も、品詞で言うと「動詞」です。人間は、言葉を述べようとする時、場面の要素の中から最初に脳の感受性に訴えてくる「状態」や「動き」を認識します。そして、脳裏に品詞で言うところの「動詞(繋合詞を含む)」を思い浮かべます。
依って、英語の文型要素としてまず必要となる要素は、この動詞(繋合詞を含む)を受け入れる要素です。この動詞を受け入れる文型の要素を、英語では品詞の「動詞(verb)」と同じ言葉を使い、「動詞(verb)」としました。
ここで注意しておきたいことは、「動詞(verb)」という言葉は、品詞名に使用されもするし、その動詞という品詞を受け入れる文型の要素名としても使用されるということです。その文型の要素である「動詞」の部分に、品詞の「動詞(繋合詞を含む)」が入ります。そして、第9章で述べたように、その動詞という品詞の中には、「(繋合詞である)be 動詞」と「一般動詞」があります。
文型の要素である「動詞」という部分に、「動詞」という品詞で括られている繋合詞の be 動詞が入ると、 繋合詞は述部の部分の意味を成立させるべく、繋合詞の後ろに何か補う語を必要とします。
この時、述部を完成させるべく補われる語が英語では complement と呼ばれます。他にも、一般動詞で目的語を取る他動詞が使用されている述部において、意味を成立させるために、他動詞の目的語の後ろに補われる語があります。これも、complement と呼ばれます。
complement とは、complete という動詞から派生して出来上がった名詞形の言葉です。complete という言葉は、古代ローマ人が話していたラテン語から来ています。com は意味の強化を図る「しっかりと」という意味を持ち、plete には「満たす」という意味があります。
つまり、complete は「しっかりと満たす」となり、その名詞形である complement は「しっかっりと満たすこと」又は「しっかりと満たすもの」となります。
文型の構成要素となる complement は、述部の部分を作り上げるために「しっかりと満たすのもの」です。日本語では、この complement という言葉を「補う語」と考え、「補語」という訳語が与えられています。
次に、第9章で、動詞には上記で示した繋合詞とみなせる be 動詞の他に、一般動詞があるとお話ししました。また、一般動詞には、「目的語」を取るものと、「目的語」を取らないものがあるともお話ししました。
日本語で「目的語」と訳されている文型の要素名は、英語では「object」です。「object」 は「投げ出されたもの」を意味します。つまり、動詞 verb によって投げ出されてくる語となります。語を投げ出してくる動詞は他動詞です。自動詞はそれのみで述部の意味を作り上げますので、何も投げ出しては来ません。
次に、述部の部分には、文型の要素である動詞に加えて、述部部分を修飾する文の要素がある場合があります。これらは、英語では adverbial と言われ、日本語では副詞類と訳されています。
最後に、もう一つ、文型の要素となるものがあります。話し手や書き手が述べる部分である述部に対するテーマです。
英語では、これを 「subject」 と言います。subject の意味は、sub が「下に」を意味し、jectは「投げ出されるもの」を意味し、subject という言葉は、「下に投げ出されてきたもの」を意味します。何の下に投げ出されてきたものかというと、述部の話題として、述部の意味範疇下に投げ出されてきたものです。日本語では、この 「subject 」に、「主語」と言う訳語が与えられました。
日本の学校教育では、文型の中心的要素は、この subject とであるかのように教わりますが、第4章で述べたように人間は、「状態」や「動き」を先に感じ取りますので、最初に文型の中心的要素として脳裏に現れてくる要素は「動詞」です。
述部の中心的要素である「動詞」が脳裏に浮かんだ後に、その「動詞」だけで述部の意味を成り立たせる場合は、その他の修飾語がない限り、述部に「動詞(verb)」のみが存在することになります。
しかし、「動詞」だけで述部の部分の意味を完成させることが出来ない場合は、述部に「補語」や「目的語」、また、付加的に「副詞類」が取り入れられます。
上記に述べたことを整理すると、英語の文型の要素には、verb (動詞)、complement(補語)、object(目的語)、adverbial(副詞類)、そして、subject (主語)があります。
これらの文型の要素から、第14章で紹介した7文型が成り立っています。再度 記述すると、英語の文型には以下の7文型があります。
1. | SV | 主語 動詞 |
2. | SVO | 主語 動詞 目的語 |
3. | SVC | 主語 動詞 補語 |
4. | SVA | 主語 動詞 副詞類 |
5. | SVOO | 主語 動詞 目的語 目的語 |
6. | SVOC | 主語 動詞 目的語 補語 |
7. | SVOA | 主語 動詞 目的語 副詞類 |
(V: Verb[動詞]、 O: Object[目的語]、C: Complement[補語]、A: Adverbial[副詞類]、Subject [主語])
次の章では、英語の文型 7文型を成り立たせている根拠についてです。「第16章 英語の文型を7文型とする根拠」をご覧ください。